チェロの退院と入院

イタリアンの剥がれの修理が終わったので引き取りに行った。工房のご主人によると、冬場は乾燥して木材は収縮、その後の湿度上昇で今度は膨張。楽器が伸び縮む際には歪が生じる。その歪を、表板・裏板と横板の接着面がずれることで吸収しているのだそうだ。

もともと、弦楽器は分解修理が可能なように膠で緩めに接着してある。接着面は動きやすいようになっている。それをがっちり止めてしまうと、歪の逃げ場がなくなり、表板や裏板にクラックが入ってしまうのだそうだ。

な〜るほど。

チェロは図体が大きいから、木材の収縮幅も大きい(=楽器の変形も大きい)。そういう手法で対処していたわけか。 剥がれて正解なのだ。

そうなると、気になるのは手元にあるもう一つのチェロ(ジャーマン)である。 イタリアンと同じ環境で保管していたので、こちらも湿度変化のダメージを受けている可能性がある。 工房のご主人がやっていたように、楽器の周縁の部分を「こつこつ」と指の背で叩いて 音を確認してみた・・・(!)何となく怪しい音が聞こえる・・・(?)・・・しつこく叩いたら指が痛くなった。

ということで修理が終わったイタリアンを引き取りに行くついでに、ジャーマンを工房に持ち込んで調べてもらった。

案の上、楽器の肩の部分で表板と横板の接着面が少し開いていた。縦方向に木材が伸びると一番動きやすい箇所になるらしい。目視で、それとわかるほどの傷口は開いていない。素人目には大丈夫そうに見えたのだが、膠の接着力が失われていて、今度はジャーマンが入院した。剥がれを放置しておくと、弾く時の振動でどんどん剥離が拡大してしまうらしい。剛弓でガシガシ弾いたりしたら効果テキメンの由。ア〜ゥ。最近、借り物のドイツ剛弓でバシバシと弾いておりました(汗

退院したイタリアンの音は、明らかにこじっかりした鳴り方に変わっていた。弦を新しく張り替えた時のように、張りのあるブリブリした鳴り方をする。修理前の、ゴムが伸びたパンツみたいな、ゆるい音は何だったのだろう?毎日弾いていると、徐々に発音が鈍化していることに気が付かないものだ(弦が古くなって音が劣化する現象と勘違いしたりする)。毛替えの際に楽器も持参して定期検診してもらう必要性を説く職人さんもいる。な〜るほどと思った。





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