発表会で弾いたといっても・・・

バイオリンの発表会はかなり経験しているし、チェロの発表会も今度で3回目。初心者、初級者、中級者の演奏レベルが、どんなものかはいろいろ見聞してきている。「正確な音程」、「滑らかなボーイング」、「豊かで芯のあるきれいな音」、「楽譜の発想記号の順守」、「適切なテンポ」で、途中で落ちることなく最後までいけたら、一応は「弾いた」ことになるだろうか。実際の発表会で、そういう演奏を聴く機会は多くないが。いろんな人がブログで誰それの曲を「弾いた」と書いていても、上記の条件を満たしているかどうかは、わからない。

いつだったか。バイオリンのお教室の発表会を見に行った時のこと。プログラムには、ベートーヴェンのロマンスとかメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲とか、なかなか素晴らしいメニューが並んでいた。本番の演奏はというと、大人の皆さん、テンポが異常に遅く、プロが弾く場合の2倍以上の時間をかけていた。四分音符を2分音符に変換したような弾き方である。音量も小さく、蚊が鳴くような啜り泣き演奏だった。途中で退席したくなったが、お教室の先生への義理もある。じっと我慢して座っているのは苦痛だった。

今年の2月に鶴見公会堂で開催されたチェロ教室の発表会では、3歳児の演奏とかは別にして、そこまでひどい演奏はなかった。子供たちは暗譜でしっかり弾いていた。しかし、レイトスターターの中高年の番になったら、スズキ教本の3巻〜10巻の曲では、脇に先生がいて一緒に同じ譜面を弾いてもらう人が多かった。生徒が弾けない箇所は先生の演奏が穴埋めする。目をつぶっていれば、途切れることなくスムーズな演奏を聴けたが、どこまでが生徒本人の演奏なのかは不明。それで、ボッケリーニとかハイドンの協奏曲を「弾いた」ことになるのだろうか??ひとりで自立して弾けないなら、もっと難易度の低い曲をやればいいだろうに、と思ってしまった。

一昨日の発表会で弾いたブレヴァールのソナタハ長調の演奏を客観的に評価してみると、音程はまずまず、発想記号もまずまず順守、ボーイングもまずまず、音色はビブラートを控えめに使って滑らかさを出したが、弓のキャラもあって若干キツメ、テンポも中庸。途中で若干のミスが出たものの落ちずに最後までたどり着いた。チェロを始めて1年半としては、並以上の出来といえるだろう。演奏中は、ピアニストにアイコンタクトを取ったり、客席の様子を見たりと、もうひとりの自分が演奏状態を監視していた。

しかし、テキスト添付のCDに入っている堤先生の模範演奏を聴くと、ひとつひとつの音が磨かれていて、フレーズのつながりがスムーズ、かつ音楽的な表情が豊かで、p や f の指定が意味を持って聴こえてくる。私の場合は、まだ機械的に音量を下げたり上げたりしている段階で、フレーズに歌心を託すところまでいけてない(そもそも、様式的に正確に歌う方法がわかってない。斎藤秀雄先生の講義録にその辺の話が出ていたので、読み直してみようと思う)。テンポ感にも余裕はなく、一本調子になりがち。堤先生の演奏では微妙なアゴーギクが見事な効果を上げていて、音楽の息遣いが聴こえてくる。それを真似てボーイングをコントロールするのは容易ではない。堤先生の演奏は立派な音楽だが、私の場合は音の羅列に留まっている。

スズキの第1巻、2巻あたりの曲なら、私もCDみたいに弾く自信はある。しかし、第3巻以降になると、ポジション移動やら、拡張やらで忙しく、楽譜を追いかけるのが精いっぱい。音楽的な表情付けをする余力はなくなる。CDの模範演奏に付いて行きたくても歯が立たない。昨日のブレヴァールの出来を反省すると、第3巻に戻ってやり直す必要を感じる。

個人レッスンでは、第4巻は昨年の9月に始めた。ブレヴァールに7か月かけ、4月から始めた2曲目のマルチェロソナタは、まだ当分終わる見込みはない。第4巻は年内いっぱい、ないしは来年にまで持ち越しになりそうな気配である。ここは焦ってもしょうがないので、じっくりやっていくしかないだろう。誰もがさらうおけいこ名曲でも、精度を高め、内容のある演奏をするのは、本当に難しいものだと痛感する。

昨日の発表会の写真がネット配信されたので開いて見た。チェロを演奏する姿をアップで撮影してもらったのは初めてだった。私の左手指の構え方が、なんだか変な感じに写っていた。指の角度に問題があるようだ。今日は、13年前の引っ越し以来、出していなかった姿見を取り出して組み立てた。遅ればせながら、ミラー先生と、にらめっこの日々を始めようと思う。







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