さまよえる老舗レーベル EMI

レコード黎明期からの老舗であるイギリスのEMIが、ユニバーサルに買収されたのは、2011年11月。1950年代にはEMIの後塵を拝していたデッカ、DG、フィリップス(フィリップスレーベルは、現在は消滅)と同じグループの傘下に入った。同時にEMIの著作権管理部門はソニーに買収され、EMIという名門企業は解体された。

EMIからは安売りBOXが次々に発売され、昔の名盤のたたき売りが始まっていた。個々のCDの紙袋にLP時代のジャケットデザインを復刻するメーカーもある中で、EMIのは手抜きというか画一的。過去の業績に対して愛情のないドライな売り急ぎをしていると感じていた(CD1枚あたり100〜200円なのだから大安売りは歓迎だったが)。

そんなEMIのクラシック部門のEMI Classicsや、Virginを管理するEMI傘下のParlophoneレーベルが、今度はワーナーに売却されたという。EMIブランドで出ていたCDは、これからはワーナーレーベルで売られる。たとえば近日発売のビーチャムのハイドン・ロンドンセット、ラトル指揮ベルリン・フィルの新録音あたりは、もうワーナーのマークに変わっている。世界遺産級のフルトヴェングラークレンペラーカラヤンのEMI音源もワーナーブランドに変わる。CBSソニーに、フィリップスがデッカになったのと同じパターンである。VOXとか Westminsterとか、LPレコード時代のマイナーレーベルの浮き沈みはいろいろ見てきたが、天下のEMIレーベルが消滅するとは予想外だった。

伝統あるレーベルには固有の録音ポリシーがあった。EMIなら無指向性マイクによる雰囲気重視のソフトフォーカスな音作りとか。レーベル名を見たただけで音質傾向が想像できただが、それも昔話。今では下請け会社による録音も増えて、レーベルごとの味の違いは希薄化した。クラシック音楽産業の斜陽化は、どこまで進んでしまうのだろう。ちなみに、ワーナーミュージックも、2004年にタイムワーナー社から投資グループに売却されている。






    

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