こども、恐るべし

二宮ラディアンホールで湘南ジュニア室内合奏団の演奏会を聞いた(入場無料)。小学校4年生から高校2年生までの子供主体の弦楽アンサンブルで総勢35名。ヴィオラ・チェロ・コントラバスには大人が入って補強していたが、バイオリンの大半は子供。チェロには小学5年の女の子が混ざって達者に弾いていた。

N響バイオリン奏者が指導している団体で、その方の教室の生徒さんが中心になっている。創立は2001年。毎年1回の定期演奏会を二宮ラディアンホールで開催していて、今年が13回め。

ちょっと前、教室の発表会をのぞいたら、子供たちの演奏が上手なので驚いた経験をしている。良質な指導を受けている生徒たちが合奏練習をしてくるのだからレベルは高そう。期待して演奏会に出かけた。

本番コンサートの前に、中高生がロビーでモーツアルトのアイネクのメヌエット弦楽四重奏の一節を披露した。どこにも傷がないパーフェクトな演奏だった。音の純度が高くて、しかも柔らかい響きに統一されている。柔軟なボーイングと音程が良くないと、ああはならない。まだ本番前なのに感服。

本場の曲目は、パッヘルベルの「カノン」、レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」、早川正昭の「日本の四季」(日本の唱歌のメロディをバロック時代のコンチェルト・グロッソ形式にアレンジした曲。コレッリヘンデル、ヴィヴァルデイのパロディで、原曲を知っている人なら、引用と改変ぶりに思わずニヤリとする趣向)。

ソロ・バイオリンを担当した中高生の男子女子らは、脱力十分な弾き方で、音程バッチリ、こなれた音を出していた。柔らかくてシルキーな音色で流暢に演奏する。見事なものだった。

トゥッティ奏者もレイトが混ざっていい加減な演奏をしているアマオケなどよりはるかに上手。「ジュニア」という名前から想像しがちな幼稚さとは無縁の本格派だった。湘南界隈にあるアマオケのどこと比べても、音程の精度、ボーイングの正確さ、音量の豊かさでは負けていないと思われた(同人数の規模で比較したら、むしろ優っているかもしれない)。各奏者の集中力とアンサンブルの完成度は、すこぶる高かった。管楽器奏者を加えれば、ハイドンモーツアルトベートーヴェン交響曲などは、達者に演奏するだろう。

親御さんの理解がなければ続けられない教室通いだが、学校教育では得られない宝物を手に入れている子供たち。あのレベルのアンサンブルを体験しちゃうと、彼らの今後の人生は、きっと豊かなものになるだろう。

指揮者(元N響のバイオリンの先生)も大人のアマオケでの諦念の表情が漂う棒とは大違い。きっちり振っておられた。大人になって弦楽器を始めたメンバーが多いオケに、あれこれ細かいことを言ってもしょうがない。最初からほどほどの指揮でお付き合いされているのが、よ〜くわかった。




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