古いハードケース

かつてハードケースの定番だったGEWAのイデア・ライト(現在は廃番、定価26万/4.0kg)を見る機会があった。1996年か97年に作られた製品で、ロゴも金具もメタル時代のレア品である。GEWA社がドイツ国内で生産した最後の頃のケースだそうで、銘器と褒める人もいる。このケース、止め金具が4ヵ所と少なく、蓋の開閉はスムーズ。蓋と身のかみ合わせも良好で、しっかりと確実に閉まる。使いやすくて、確かによく出来ている。

そのイデア・ライト、18年の歳月が経過すると、どうなるか?

外側の樹脂製の部分はほとんど傷んでない。塗装には艶があり、細かい小傷もたいして目立たない。多少の錆が出ている金具類も、機能的には何の問題もない。程度良好。このぐらいの外観のケースを使っているチェロ弾きは珍しくない。

問題はケースの内側である。布張りの下地にめぐらされていたはずのクッション材(スポンジ層)は崩壊して粉々になっていた。内張り布にはたるみが出て、ケース本体から剥離している。 つまり、クッション無しで、チェロを硬い樹脂ケースに放り込むのと同じである。そのため、楽器の木部(例えばスクロールの裏側など)は、ケースに当たる部分が削られてダメージを受けることになる。また浮き上がった内張布がチェロに接触し続け、夏場に悪さを働き、ニス表面に白ボケを起こす。

往年の銘器も古くなればただの箱。緩衝材が劣化し、楽器の保護機能が失われてしまう。しかし、スポンジ不使用のGEWAのバイオリンケースは、40年経過しても現役で通用するのを知っている。経年変化でボロボロになるのは特定の部材なのだろう。イデア・ライトの樹脂の箱は頑丈だから、クッションになる毛布か何かを使って楽器を収納すれば、室内保管用ならまだ使える。湿気がこもりそうな気もするが。




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