弦楽アンサンブル #6

エルガーの「弦楽セレナーデ」の3回め。第3楽章の初回合わせをやった。技術的には容易な曲である。誰でも弾けるとはいえ、音量変化の指定が細かく付いていて、薄味のデリケートなニュアンスを表現するとなると、そう簡単にはいかない。全体的には英国音楽に通底する平明な雰囲気が漂っているが、その中で刻々とゆらめくものがある。風に煽られた池の水面に広がる繊細な波紋を眺めるようなイメージ。フレーズに陰影を付けるちょっとしたアクセントを表現するには、弓を強く擦り付ける(圧着する)弾き方ではダメで、ストロークを大きく取って音を瞬時に膨らませる奏法が求められる。クレッシェンドの頂点にフラジオレットが置かれていたりする音楽である。この曲には濃厚な味付けは不似合いなのだ。

指揮者の先生からは、ピアニッシモの箇所でも音が痩せないようにとの注意があった。音量を単純に下げればそれでいいのではない。柔らかい音色でたっぷりと歌って欲しいとのこと。確かにファースト・ヴァイオリンが担当する主旋律がはっきり響かないと、もやもやしたまま燃焼不足の状態で終わってしまう。ピアノは弱音、フォルテは強音と単純に割り切って弾けばいいというわけではない。

エルガーの後はバッハのブランデンブルク協奏曲第3番をやった。余韻嫋々とは対照的な数学的論理の固まりみたいな音楽。今回、私は事前にチェロを舞台にスタンバイさせておいた。ヴァイオリン席から移動する席替えに要した時間は、ほんのわずかで済んだ。最近、チェロパートは参加者が増加している。私の後に入った人は、皆さんブランデンブルクの第3パートを選んでいる。結果として3番を弾くチェロが5人になってしまった。難易度は1番でも2番でも同じだが、気分的に3番を選ぶのだろう。今日は1番チェロは2名、2番チェロは1名しかいなかった。かなり偏ったバランス。

会場で9月以降の練習スケジュールが発表された。テレマンの「ビオラ協奏曲」を2回やって、10月からベートーベンの弦楽四重奏曲第14番(弦楽合奏用の編曲譜)にとりかかる。7楽章まである大曲を来年2月まで、じっくりやるそうだ。あなたはチェロで乗りますか?ヴァイオリンにしますか?と指揮者の先生から聞かれてしまった。楽譜を見て考えますと答えておいたが、ベートーベンの弦楽四重奏曲だからどのパートも難しい。50ページにもなる長大なスコアを眺めると、ため息が出る。


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