岡田美術館開館5周年記念展「美のスターたち」を見る

箱根小涌園のそばにある岡田美術館が5周年記念「美のスターたち展」(9月30日~2019年3月30日)を開催する。所蔵する名品を惜しみなく一挙公開の大盤振る舞いだそうで、快晴に恵まれた28日に内覧会を見てきた。この日はマスコミ関係の取材も同時に行われ、門前に大型バス3台が横付けされていた。美術館を作った岡田さんはパチンコ関係のスロットマシーン製造で財を成し、資産3800億とかいわれている。昨年から会社の経営方針をめぐって親子で争いになり、某家具屋と同じパターンで子供が創業者(父親)を追放する事態に。現在も係争中とのこと。そんな話題もあるのでマスコミも関心があるのかも。取材に100人以上来ていたと思う。

 

展覧会の目玉は歌麿の「深川の雪」、若冲の「孔雀鳳凰図」の同時展示(ただし両者が同時に見られるのは9月30日から10月10日までの11日間だけ)。数年前、歌麿の肉筆大作が披露された時はテレビでも取り上げられ、大勢の来館者が押し寄せたらしい。私は今回初めて拝見したけれど、予想以上に大きいのでビックリした。保存状態も良好で、コンパクトな作品が多い浮世絵のイメージが変わってくる。

 

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                         歌麿「深川の雪」 199×341cm

 

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            若冲「孔雀鳳凰図」 140×82cm

 

若冲の鳥の絵を見せてもらったのは2度目。相変わらず艶やか。それよりも驚いた作品は横山大観の「霊峰一文字」である。特注で織らせた一枚ものの絹布に金泥と胡粉と墨で富士山を描いただけのシンプルな構図。よくある絵巻に見えるが、実物は縦94センチ、横9メートルという超大作。大阪の人形浄瑠璃の舞台で使う幕として制作されたものという。過去の横山大観展に出品されたことがない作品で、存在自体があまり知られていない。写真で見ると普通の絵巻のように小さな作品に見えてしまうから損をしている。実物はよくある大観の「富士山」とは一線を画す雄大なスケール感が素晴らしかった。同じ部屋には同じ年(大正15年、1926)に描かれた水墨画が2点並べてあった。御舟の「木蓮」と古径の「麦」。御舟は小林館長絶賛の傑作とのこと。大観のおおらかさに対して、後者の2点はピリピリした切迫感が漂っている。

 

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                              大観「霊峰一文字」

 

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御舟「木蓮」 149×47cm

 

5階まである展示フロアの1階と2階は日本、朝鮮、中国の陶磁器、ガラス、漆器などが満載。どれも名品とはいえ、3階、4階の絵画フロアにたどり着くまでに疲れてしまうから、ほどほどに眺めておくのが無難。最上階のレセプション会場では副館長(岡田夫人)が凝っている新作チョコの発表会をやっていた。いつもながら展示室が広大で、展示品も多くて、歩くのが大変な美術館である(上野の東博本館の1階、2階を一周するような感じ)。

 

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