年末恒例の第九を聞く

28日夜、毎年恒例の年末第九コンサートを聞いてきた。秋山和慶指揮/東京交響楽団の演奏。会場はサントリーホール。座席はお気に入りの2階LAの後ろの方(このあたりの席は舞台のチェロパートだけでなく、客席全体を見渡せるのが重要)。東響の第九は東響コーラスが上手なのと、秋山さんの端正な音楽作りが気に入って5年連続で通っている。

 第九の前にヴィヴァルディの「四季」から「春」・「冬」を演奏するのは東響の定番。ソリストはまだ東京音大在学中の20歳の若手(辻彩奈という女性)だった。ココイチのイエロー・エンジェル財団から貸与されたガダニーニを弾いていた。コンマスの水谷さんも同じメーカーの楽器を使っていたので、噛み合う場面では音がきれいに溶け合っていた。

 第九のソリストは日本人歌手4名。メゾソプラノ藤村実穂子さんはバイロイト音楽祭の常連歌手である。ほの暗くてよく通るシャープな声質は存在感があった。バスの妻屋秀和さんもおなじみの方。豊かな声量で朗々と歌っていた。貫禄ある二人にはさまれたソプラノとテノールもそれぞれに責務を果たして、4重唱ではいいバランスだった。コーラスは相変わらず気合も迫力も十分で見事。秋山さんの指揮は手堅くケレン味がないけれど、4楽章の最後ではしっかり盛り上げて、客席は拍手喝采

秋山さんが振る第九は今年が40周年だそう。年末の第九特別演奏会への出演は今年で終了し、来年からは東響音楽監督ジョナサン・ノットの指揮に変わるという。とはいえ2019年12月14日のミューザ川崎名曲全集での第九は秋山さんが指揮する。まだ聞くチャンスはある。

2016年12月の第九演奏会のライブ録音CDが発売されているので聞いてみた。私も実際に会場で聞いたコンサートである。淡々と流れていたような印象がある演奏会だったけれど、CDで聞くといろいろと細工を仕掛けていることがわかる。それが隠し味的な演出である点が奥ゆかしいというか、秋山さんらしい。

 

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第九が終わった後、何度目かのカーテンコールが済むと、お約束のアンコール「蛍の光」の合唱が始まった。ソリストも一緒に歌っている。コーラスの人たちが舞台から客席に降りてきて一列に整列。3度目の繰り返しでハミングになるころ、ホールの照明が落とされ暗くなった空間に、コーラスの人が振るペンライトの光が夜空に浮かぶ星のように輝き始める。2階の舞台横の席からだとこの様子がよく見渡せるのでいいのだ。オケの序奏に続いてしんみりと感興豊かに歌い上げるから、じ~んときてしまう。発売されたライブ録音CDには「蛍の光」は入ってない。東響の第九の名物なので残念に思う。

 

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