トランプ大統領から贈られたヴィオラ

今回、トランプ大統領から天皇陛下への贈答品として選ばれたヴィオラは、アーカンソー州のバイオリンショップから納品されたIvan W. Allisonの1938年の作。アメリカの有名作曲家コープランドの写真とともに特製ケースに収納されて贈られた。写真を見るとガルネリ風の外観を持つ楽器のようだ。制作後80年が経過しているから板もほどほどに枯れて弾きやすくなっているだろう。
 

f:id:seivoci0004:20190531023914j:plain

 
ALLISON、Ivan W.(イワンW.アリソン )1884~1966年
1884年生まれ。ウェストバージニア州の州都チャールストンで活動し、1966年に死去。 アメリカ産の材を用い、ヒル商会(ロンドン、1992年に閉店)から仕入れたオイルニスを独自に調合して使った。150以上のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを制作したという。 

アリソンの1930年代のヴァイオリンのオークション価格(エスティメイト:落札予想価格)は1000~1500ドル。店頭価格はこの数倍(日本の楽器商が輸入販売した場合はさらにアップする)。ヴィオラはヴァイオリンの2割増しぐらいだろう。
 

A 1938 viola bought from an Arkansas violin shop was among the gifts presented yesterday by President Trump to Emperor Naruhito

 

A viola made in 1938 by Ivan W. Allison of Charleston, West Virginia, was amongst the gifts presented by President Trump yesterday to the new Emperor of Japan, who happens to be a keen viola player.

 

The instrument was sold to the US State Department by a violin shop in Little Rock, Arkansas, and presented to the Emperor in a custom case, alongside a photo of U.S. composer Aaron Coplad.

 

天皇陛下が皇太子時代から使っているヴィオラはクレモナ在住の日本人作家石井 髙氏が1998年に制作した楽器。買い上げではなく永久貸与されているらしい。石井氏の回想録に以下の記述がある。

 

 f:id:seivoci0004:20190531025728j:plain

 

1998年 お約束のとおり皇太子殿下にヴィオラを製作、お渡しする。なお、この件に関しては、少々説明が必要と思う。皇室は誰からも個人的に物品を受付けない。ぼくのヴィオラはクレモナで、皇太子殿下にお話を個人的にしてあったので、それを考慮して東宮侍従長が「とりあえずお預かり」ということで受け取られた。東宮御所からは、献上という言葉は国家と関わることであり、ぼくのヴィオラのお渡しは非常に珍しいケースで、正確に言うと献上という事項ではないので、その言葉は使わない方が望ましいとのお達しだった。したがってお預かりということで、ぼくが皇太子殿下にヴィオラをお貸ししているということになる。なんと嬉しく名誉なことだろうか。

 

~SPAZIO発刊40周年によせて~ 【第3回】SPAZIOが見ていたぼくの40年 | LIT's Cafe | 社会文化活動 | 企業情報 | NTTデータ ジェトロニクス

 

  

にほんブログ村 クラシックブログ チェロへ

にほんブログ村